北欧住宅のつくり方
資産価値を高める(実践編)
1. 住宅先進国って何?
はじめまして。「モーラ」代表の金井田です。私は2000年から2009年までの10年間、スウェーデンで
本国仕様の住宅と建材を日本へ輸出する仕事をしていました。2009年に帰国し、現在に至るまで、様々な北欧住宅に携わってきました。その中で学んだスウェーデンの考え、日本の建築実情を踏まえ、これから日本で新築住宅を建てる人、リノベーションで住宅を改修する人へ役立つ実践ノウハウです。
外壁ブロックをスウェーデン工場で作製し日本で組み上げた
本国仕様の住宅、日本のツーバイ工法で北欧レベルの断熱性能を誇る家、在来工法でありながらスウェーデンのパッシブハウスレベル超断熱の家、
スウェーデン建材を取り入れてもデザインは和風モダンな家・・・、どれも
興味深いプロジェクトばかりですね。
それぞれの家でコンセプトは違いますが、共通していることは、スウェーデン本国仕様の住宅や建材、建築技術を取り入れた新たな住宅づくりの試みです。ブラインド内蔵の
2+1=3層ガラス木製窓、断熱性の高い玄関ドア、外壁の断熱材厚は20cm以上、
熱交換型換気システムによる快適な住環境など、相当高レベルの住宅性能はもちろん、最も重要な核心は、住宅の資産価値の高まる設計と作り込みです。
スウェーデンは世界で住宅先進国と呼ばれています。高い断熱気密性能で、極寒の中でも最低限の暖房エネルギーで快適な住環境を保てる高い住宅性能を有しますが、その「ゆえん」は、100年以上の耐久性とその高い資産価値にあります。住宅は社会資産でもあるのです。
住宅は親から子へ、人から人へと「高い価値」を持って受け継がれ、大事に末長く使われれます。長い間良い状態で使い続けられる家・・・と言った方が適切かもしれません。その結果、みんな誰もが最低限の少ない住宅資金の負担で、より良い住宅に住める社会が成り立っています。これこそが豊さであり、住宅先進国の姿です。
2. 少ない住宅資金の負担?
例えば、日本で新築住宅を建てる時に、住宅の価格が3,000万円だとします。全額ローンで利子を2%、返済期間を30年とした場合の返済総額が4,000万円としましょう。ここで日本の住宅寿命(耐用年数)も30年程度ですから、住宅に費やした消費資金は、30年間で4,000万円/棟という計算になります。
これに対しスウェーデンでは、住宅の価格を同じ3,000万円として、返済期間を30年としても、全額ローンである必要がありません。住宅本体に資産価値があるため、家を担保とする事ができます。単純比較するため、返済総額を日本と同じく4,000万円とした場合、例えば、30年後この家の資産価値が2,000万円であれば、住宅に費やした消費資金は、4,000-2,000=2,000万円/棟です。日本と比べて2,000万円も得をするという計算になります。
スウェーデンでは築30年の住宅に、資産価値が2,000万円もあると聞くと驚きですが、実際には、新築時と同等、それ以上の資産価値を有することも珍しくありません。そして住宅寿命(耐用年数)は同じ木造住宅でありながら100年以上です。日本と違ってほとんど地震がないからでしょうか? いや、そうではなく、耐用年数が圧倒的に長く、驚くような高い資産価値を生み出すスウェーデンの住宅は、日本の住宅と決定的に違うものがあるのです。
3. 日本と決定的に違うもの
スウェーデンの住宅構造は、日本でいう枠組壁工法です。45x195mmなど分厚い縦枠材を使った外壁で、断熱材を充填しています。この主体構造は、100年以上使えます。地震はありませんが、仮に地震を想定しても外壁面等を構造用合板と釘で補強すれば、日本でも建築可能なレベルになります。
一方で日本の住宅構造は、さすが地震大国だけあって、耐震・制振・免震技術と世界トップレベルで、100年以上使える主体構造なのです。断熱性能では劣りますが、105x105mm柱の在来構造でも、外断熱や内断熱と付加断熱を施すことで、スウェーデン同等以上の断熱性能レベルは可能になります。
では、一体、何が決定的に違うのでしょうか?
実は、住宅に使われている「建材」です。家は主体構造を基本とし、窓やドア、屋根材、床材や階段、造作材と様々な建材から構成されています。これらの建材が、スウェーデンと日本で全く違うのです。